元施工の優位性が薄れてきた。かつては、A社が発注する建築工事はB社、設備工事はC社と特命発注するケースが多かった。施工者は、完成後の維持管理も含め、建築主の要求をすべからく受け入れ、信頼関係を築いてきた。それが次のプロジェクトを特命受注するための営業スタイルでもあった。本社ビルをはじめとする事務所ビルや工場、諸施設の建て替えだけでなく、新築工事を受注する際にも、元施工業者は優位性を発揮していた。近年、元施工の優位性が薄れてきている背景には、いくつかの事情がある。
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金融機関に代表される民間企業の再編、不動産ファンド、SPC(特別目的会社)の組成、固定資産の売却によるプロジェクト、複数の事業者が参画するプロジェクト、信託案件のプロジェクトなど市場主義の浸透が、元施工の優位性を薄れさせた要因の1つだ。金融機関の再編は、融資先やプロジェクトの紹介先、斡旋先の建設会社が増えることを意味する。もちろん、「よりよいものをより安く」という発注者のコスト意識もある。だが、最も大きな理由は事業主の発注責任だ。社内だけでなく、株主などのステークホルダー(利害関係者)に対する説明責任がつきまとうケースが増えている。「なぜA社なのか?」「なぜ特命なのか?」「より安く発注する努力はしたのか?」。経営者だけでなく、株主に対する説明責任から、特命発注は合意を得ることが難しくなり、「競争」になる。最終的に特命発注になっても、その間の経緯説明、明確な理由が必要になる。合い見積もりをとらないと、説明根拠のない発注として容易には受け入れられない。「極端に特命受注が減っているわけではない」という建設会社もあるが、元施工案件の掘り起こしを「重要業務」として位置づける建設会社も少なくない。元の施工業者をいったん白紙に戻すことで、適正な競争を確保しようとする企業もある。