紙を建築素材として使う。果たしてできるのだろうかと一瞬考えてしまうが、答えは然りということになる。それを建築家が実践している。たとえば東京に「紙のギャラリー」(一九九四年)という作品がある。これは三宅デザイン事務所に所属する若干デザイナーが、ファッションやプロダクトなどの自作発表に使用するのを主な目的にしてつくられた。外観の印象はモダンなガラス面を持つ箱といったところだが、内部に入るとそうした印象は一変する。
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そこには構造体の一部として機能する合計で五七本もの紙の円柱が林立しているからだ。これらの紙の柱は「紙管」と呼ばれるもので、素材としては再生紙を利用し、内部は空洞になっている。紙というと華奢なものと思われることが多いが、この作品はそうした紙を一般の予想に反して建築材料として用い、骨格のしっかりとした建築に仕立てている。坂は神戸市の鷹取にも、やはり紙を使った作品「紙の教会」(一九九五年)を手掛けている。震災によって焼失した教会を、紙の建築でつくり直しかものである。この教会も、デザインとしては「紙のギャラリー」と似通ったイメージを持つ。外部は半透明のポリカーボネイトを材料とする箱だが、室内に入れ子のようにして紙管が五八本、全体が楕円を描くように配置されている。一見華奢に思える紙管が意外に丈夫で、構造の重要な要素となっているのは、すでにこの作家の独特な手法といえよう。